
なぜ整形外科では腰痛が治りにくいのか?|保険診療の構造と役割分担を整体師が考える〈東京・自由が丘〉

整形外科で「異常なし」でも、腰痛が続くのはなぜか?
──腰痛を代表例に見る、保険診療の仕組みと役割分担
はじめに|「医者に診てもらったのに治らない」という違和感
腰痛で病院を受診したのに、以下のような対応で終わった経験はありませんか?
- レントゲンでは「異常なし」
- 痛み止めと湿布だけ
- しばらく様子を見ましょう、と言われる
そして数か月、あるいは数年。腰痛は治らないまま続いている。これは決して珍しい話ではありません。
先に、大切なこと|「まず病院へ行くべき腰痛」があります
この記事は「病院に行かなくていい」という話では、まったくありません。むしろ逆です。次のような症状・背景がある腰痛は、自己判断せず、まず整形外科(医療機関)での確認を優先してください。
こんな腰痛は、まず病院へ
- 足のしびれ・力の入りにくさを伴う
- 排尿・排便の異常を伴う
- 発熱を伴う
- 安静にしていてもズキズキ痛む・夜間に痛みで目が覚める
- 転倒・事故など、強い外力のあと
- がんの治療中・治療歴がある、骨粗しょう症と言われている
重大な病気を見つけて除外することは、医療にしかできない、最も大切な仕事です。ここから先は、「病院で確認しても異常が見つからず、それでも痛みが続いている」方に向けた話です。
医療が最も重要な役割を果たす場面
病院の仕事は、病名がついた疾患の治療だけではありません。病名がまだ確定していない症状を評価し、鑑別することも大切な仕事です。
医療の検査・治療が力を発揮する例
- 骨折・脱臼
- 感染症
- 腫瘍(ガンなど)
- 明確な神経障害
一方、原因を一つに特定しきれない
「非特異的腰痛」
- 痛みの原因となる組織や病態を、特定の病名に確定しきれないことがある
- 画像所見だけでは、痛みとの因果関係を決めきれないことがある
※かつて「腰痛の85%は非特異的(原因を特定できない)」と広く紹介されてきました。しかし日本の『腰痛診療ガイドライン2019』は、この数字は再考が必要だとしています。整形外科専門医が丁寧に評価した国内の調査では、75%以上で原因の推定が可能で、診断不明は約22%だったと紹介されているのです。つまり——原因の見当は、つけられることが多い。それでも「様子見」になりやすいのはなぜか。私はここに、保険診療の仕組みが関わっていると見ています。
そして、重大な疾患が否定されても、痛みが残る方はいます。ここからが、この記事の本題です。
保険診療には、適用できる治療と診療報酬のルールがある
保険診療には、一般にはあまり知られていない仕組みがあります。
- 医学的に妥当な診断のもとで
- 診療報酬上認められた
- 検査・治療・リハビリなどを行う——これが保険診療の仕組みです
保険診療にも、診察・検査・薬物療法・運動器リハビリテーションなど、複数の選択肢がきちんとあります。自由診療のように時間や方法を自由に組み立てられる仕組みではない、というだけです。
一方で、腰痛の現場には、こんな「画像に写りにくく、触診と時間が要る」領域があります。
- 仙腸関節まわりの痛み
- 靱帯や腱の付着部に積もった負担
- 筋膜の動きにくさ・細かな機能の問題
一人ひとりの筋肉や動作を、時間をかけて触診し続けるような方法は、保険診療と、当院のような自由診療とでは、提供の仕組みが異なります。私は20年の臨床から、この制度上の違いが、医療と整体とで一人の患者さんにかけられる時間やアプローチが異なる背景の一つではないかと考えています。
医療と整体は、競合ではなく「役割分担」
海外には、筋骨格系の痛みの入り口を、医師以外の専門職が担う仕組みもあります。たとえば英国では、地域によって理学療法(MSKサービス)へ医師の紹介なしでアクセスできます。ノルウェーではカイロプラクターが公的医療の一次ケアに位置づけられ、デンマークでも医師の紹介なしで受診でき、公的補助の対象になっています。
病院(医療)の役割
「病気」を診る
病気・けがを医学的に評価し、治療する。重大な疾患の除外は、医療にしかできません。
整体(当院)の役割
「不自然」を見る
病気が否定されたあとの、筋肉・動作・体の使い方に着目する。医療を代替するものではありません。
私はこの仕事を、「体の不自然さを見ること」だと表現しています。薬も手術も必要ないが、このままでは変わりにくい——そういう体の状態に、時間をかけて向き合うことです。

